
SNSで傷つく子どもたち|親が知っておきたい“心の変化”
今やSNSは、多くの子どもたちにとって友達とのコミュニケーションに欠かせない存在です。NTTドコモ モバイル社会研究所の調査によると、小学生高学年のSNS利用率は6割を超え、中学生では9割以上が利用しています。
一方で、SNSには仲間外れや悪口、写真の無断共有、他人との比較など、子どもの心を傷つけるリスクもあります。特に夏休みはスマートフォンを使う時間が増え、学校という見守りの場も少なくなるため、SNSトラブルが起こりやすい時期です。
大切なのは、トラブルが起きてから対応することだけではなく、その前に現れる“心のサイン”に気づくことです。
この記事では、SNSで傷ついた子どもに見られる心の変化やその背景、そして保護者ができる関わり方について、臨床心理士監修のもとでわかりやすく解説します。
監修者:臨床心理士・公認心理師 新井知佳
目次
SNSで傷つく子どもが増えている

SNSは人間関係そのものになっている
かつて子ども同士のやり取りは学校や習い事の場が中心でした。しかし現在は、SNSやメッセージアプリが子どもたちの人間関係の大切な一部になっています。
例えば、グループチャットでのやり取りでは、「既読がついたのに返信が来ない」「自分だけ話題に入れてもらえない」といった出来事が気になることがあります。また、SNSでは「いいね」の数やフォロワー数が目に見えるため、他の子と自分を比べて落ち込んでしまうこともあります。
大人から見ると些細なことに思えるかもしれません。しかし、子どもにとっては友達とのつながりが大きな意味を持つため、SNS上での出来事が心に大きな影響を与えることがあります。
子どもがSNSで傷つく主なケース
SNSで起こるトラブルにはさまざまなものがあります。
まず多いのが、仲間外れや無視です。グループチャットから外されたり、自分だけ返信がもらえなかったりすると、「嫌われているのではないか」と不安になる子どももいます。
また、悪口や誹謗中傷も深刻な問題です。直接言われるだけでなく、匿名アカウントや見えない場所で陰口を書かれるケースもあります。
さらに、写真や動画の無断共有も少なくありません。友達同士の軽い気持ちで投稿した内容が拡散され、本人を深く傷つけることがあります。
加えて、SNSでは他人の楽しそうな投稿や華やかな生活が目に入りやすく、「自分だけがうまくいっていない」と感じてしまうこともあります。このような比較の積み重ねは、自己肯定感の低下につながることがあります。
政府広報オンラインでも、SNSは相手の表情や声のトーンが伝わりにくいため、誤解やトラブルが起こりやすいことが指摘されています。何気なく送った言葉が相手を傷つけたり、投稿した内容が予想以上に広がったりすることもあります。
SNSは便利なコミュニケーションツールですが、その一方で子どもの心に見えない負担を与えることもあります。だからこそ保護者は、「SNSを使っているかどうか」だけではなく、「SNSを使うようになってからどんな変化があるか」にも目を向けることが大切です。
海外ではSNS利用を制限する動きも

子どもとSNSの関係は、世界的な課題として議論されています。例えばオーストラリアでは、16歳未満のSNS利用を制限する法律が成立しました。
こうした背景には、誹謗中傷や仲間外れといったトラブルだけでなく、有害なコンテンツへの接触やメンタルヘルスへの影響に対する懸念があります。こども家庭庁の資料でも、SNSが子どもの発達や健康、不安感や自己肯定感などの心の健康に影響を与える可能性が指摘されています。
もちろん、SNSには友達との交流や情報収集といったメリットもあります。そのため世界各国では、「使わせるか、使わせないか」ではなく、「どうすれば子どもが安全に利用できるか」という視点で議論が進められています。
こうした動きは、子どものSNS利用が単なるネットの問題ではなく、心の健康にも関わる重要なテーマとして捉えられていることを示しています。
SNSで傷ついた子どもに現れやすい心の変化

SNSでのトラブルや人間関係の悩みは、大人が思っている以上に子どもの心へ影響を与えることがあります。しかし、子ども自身が「SNSで嫌なことがあった」と素直に話してくれるとは限りません。不安や悲しみをうまく言葉にできず、行動や態度の変化として表れることも少なくないのです。
口数が減る
これまで学校や友達の話をよくしていた子どもが、急に口数が減ることがあります。「今日どうだった?」と聞いても、「別に」「普通」としか答えなくなったり、自分から話をしなくなったりすることもあります。成長に伴って親との会話が減ることは自然なことですが、急な変化が見られた場合は、何らかの悩みを抱えているサインかもしれません。
スマホを手放せなくなる
SNS上での人間関係に不安を感じていると、何度もスマホを確認するようになることがあります。「返信が来ているかな」「何か書かれていないかな」と気になり、通知がなくても画面を開いてしまうのです。利用時間が長くなるだけでなく、食事中や就寝前までスマホを気にしている様子が見られる場合は注意が必要です。
イライラや不機嫌が増える
SNSで傷ついた気持ちをうまく表現できない子どもは、そのストレスを怒りとして表すことがあります。以前より怒りっぽくなったり、家族への反抗的な態度が増えたりすることもあるでしょう。保護者からすると「機嫌が悪いだけ」に見えるかもしれませんが、その背景には友達関係の悩みや孤独感が隠れていることがあります。
自己否定的な発言が増えて、元気がなくなる
SNSでは他人の楽しそうな投稿や成功体験が目に入りやすく、自分と比較して落ち込んでしまうことがあります。”自分は人より劣っている”という劣等感が強くなる 結果、「どうせ自分なんて」「みんなの方がすごい」といった自己否定的な発言が増えることがあります。こうした言葉は、自信を失っているサインである可能性があります。
また、自分以外の友人たちが集まっている投稿を目にすると、「自分は嫌われているかもしれない」と強い不安を感じてしまうこともあります。
こうした劣等感や不安が続くと、気分が沈みやすくなります。表情が暗くなる、以前は楽しんでいたことへの関心が薄れる、意欲的な姿勢が見られなくなるなど、普段の元気な様子とは異なる変化が現れることがあります。
睡眠や食欲に変化が出る
心のストレスは身体にも影響を与えます。夜遅くまでSNSを見続けて寝不足になったり、不安でなかなか眠れなくなったりすることがあります。また、食欲が落ちたり、反対に食べ過ぎたりするなど、食生活に変化が現れることもあります。こうした変化は子ども自身も気づきにくいため、保護者が日頃から様子を見守ることが大切です。
もちろん、これらの変化が見られたからといって、必ずしもSNSが原因とは限りません。しかし、複数のサインが重なっていたり、以前と比べて明らかな変化が続いていたりする場合は、子どもが何らかの悩みを抱えている可能性があります。大切なのは、「何があったの?」と問い詰めることではなく、子どもの小さな変化に気づき、安心して話せる環境を整えておくことです。
保護者ができる関わり方

子どもがSNSで傷ついているかもしれないと感じたとき、すぐに原因を聞き出そうとするのではなく、安心して話せる環境をつくることが大切です。
無理に聞き出そうとしない
子どもの様子が気になると、つい詳しく聞きたくなるかもしれません。しかし、何度も質問を重ねたり、無理に話をさせたりすると、かえって心を閉ざしてしまうことがあります。
話したくないときは無理に聞き出そうとせず、「いつでも味方だよ」「何かあったらいつでも話してね」という姿勢を伝えることが大切です。子どもが自分のタイミングで話せるよう、見守ることも支援の一つです。
気持ちを否定せず受け止める
子どもが悩みを打ち明けてくれたとき、「気にしすぎだよ」「そんなことで落ち込まなくて大丈夫」と励ましたくなることがあります。
しかし、保護者に悪気がなくても、子どもには「気持ちを分かってもらえなかった」と感じられてしまうことがあります。まずは、「それはつらかったね」「嫌な気持ちになったんだね」と気持ちを受け止めることが大切です。気持ちを理解してもらえたという安心感が、次の相談につながります。
SNS以外の居場所をつくる
子どもにとってSNSが唯一の居場所になってしまうと、人間関係のトラブルが起きたときのダメージも大きくなります。
家族との時間や習い事、部活動、地域活動など、SNS以外にも安心して過ごせる場所や人とのつながりがあると、心の負担を軽減しやすくなります。
まとめ
・SNSは子どもにとって大切なコミュニケーションの場である一方、仲間外れや誹謗中傷、比較によるストレスなどのリスクもある
・SNSで傷ついた子どもは、口数の減少やイライラ、睡眠や食欲の変化など、心のSOSを行動で示すことがある
・大切なのは原因を問い詰めることではなく、気持ちを受け止め、SNS以外にも安心できる居場所をつくること
SNSのトラブルは、子どもが自分から話してくれるとは限りません。だからこそ、日頃から子どもの小さな変化に目を向けることが大切です。
特に夏休みはSNSを利用する時間が増えやすい時期です。親子でSNSとの付き合い方を見直し、子どもが「困ったときは親に相談しよう」と思える関係を築いていきましょう。それが、SNS時代の大切な見守りにつながります。
新井知佳
臨床心理士・公認心理師
臨床心理士・公認心理師の資格を持ち、小児科やスクールカウンセラーとして、子どもや保護者の心に寄り添う支援に従事。現在は、小学生の長女と、自閉スペクトラム症・知的発達症をもつ年長の長男の子育てを中心とした生活を送りながら、専門家としては主に認知症の心理評価などを行っている。子育ての実体験と心理の専門知識を生かし、発達や子育てに悩む家族への情報発信や支援活動にも取り組んでいる。