【犯罪学者 小宮信夫教授監修】危ない場所はどっち? 子どもと学べるイラストクイズにチャレンジ!

私たち保護者は、子どもたちが安全に毎日を過ごせるよう、どんな防犯対策を取るべきかよく考えますよね。しかし、子どもに防犯対策を教えることは、実はとても難しいですよね。誰が危ないかなんて、見た目だけでは判断できないからです。

それに犯罪を企てている人は目立たないように振る舞うため、一見、危険人物には見えないことが多いのです。

そんな中、犯罪学者の小宮信夫教授(立正大学)の著書「なぜ『あの場所』は犯罪を引き寄せるのか」(青春出版社)(以下、「本書」)では、危険を、不審者や怪しい人などの「人」ではなく、「場所」に注目する防犯の考え方が紹介されています。これは、子どもでも理解しやすく、実践的な方法です。

この記事では小宮教授の教えを分かりやすくクイズ形式にしてあるので、ぜひ親子で一緒に読んでみてください。

監修者:小宮信夫 先生

どちらが危ない場所?

子どもに危害を加えようとしている人を外見から判断することは、非常に難しいです。それは、その人が怪しまれないように装うからです。

それに対し、監修者の小宮先生の防犯の考え方は、危険を「人」ではなく、「場所」を見て判断するものです。いくら犯罪を企てている人でも、犯罪が成功しそうな場所でなければ犯罪をしないので、防犯は犯罪が起きそうな危ない場所に近づかないこと、または、すぐにその場を離れること。と、本書では教えています。

では一体、危ない場所とは具体的にどんな「場所」を示すのでしょうか。

次に示す画像を見比べて、危ない場所の特徴を見比べてみましょう。

見るべきポイントは「入りやすくて見えにくい」というところです。

①危ない場所はどっち?ー住宅地ー

A

B

答えはAです。

一目見ると、大して変わらない風景ですが、Aの画像はそれぞれの家の塀に高さがあり道路の様子が分かりにくくなっています。そのため犯罪を企てている人に「目撃されにくい」と思わせてしまいます。

一方、Bには塀がある家もあるが、そこまで高くなかったり、隙間が多いため家の中から道路の様子が分かりやすいです。

したがって、Aの方が見えにくいため、Aの方が危険ということになります。

②危ない場所はどっち?ー商店街ー

A

B

答えはBです。

人込みだと、誰かが見ている。という気持ちになりがちですが、実は誰も見ていないことがほとんどです。人込みではそれぞれの人の注意や関心が分散されてしまいます。その結果、犯罪を企てている人の行動が見落とされやすくなります。見知らぬ人が多すぎる場所では、人々の責任感が薄まり、犯罪を企てている人に捕まりにくい場所、つまり心理的に「見えにくい」と思わせるものなのです。

一方、人通りが少ない場所は、周囲の人々の関心度が高く、犯行がばれて通報されてしまう、と思わせるので犯罪をあきらめさせる安全な場所と言えます。

したがって、Bの方が危険ということになります。

ただし、Aの場合、人通りは必ず途切れます。そして犯罪者はそのタイミングを狙っていることが多いため、気付かないうちに「見えにくい場所」になっていることもあり、注意が必要です。

③危ない場所はどっち?ー公園 ①ー

A

B

答えはBです。

落書きやゴミが放置されていると、犯罪を企てている人に「この場所の管理はずさんで、周囲の人間は無関心な人が多い」と思わせてしまうことがあります。落書きやゴミの放置は、心理的に「見えにくい」と思わせるものとなり、危険な場所と言えます。

一方、落書きやゴミの放置がないAのような場所は、周囲の人間の関心度が高く、犯行がばれて通報されてしまう、と思わせるので犯罪をあきらめさせる安全な場所と言えます。

したがって、Bの方が危険ということになります。

④危ない場所はどっち?ー公園 ②ー

A

B

答えはBです。

どちらもゴミも落書きもなく、また見通しも良いため違いがないと思われがちです。

しかし、犯罪を企てている人にとって好都合な条件がBにはあります。

それはベンチの場所です。Aのベンチは遊具の背面にあるのに対して、Bのベンチは遊具に面して設置されています。

公園で遊んでいる子どもを物色しようとする犯罪を企てている人にとって、Bのベンチの向きは怪しまれずに物色でき、またベンチの近くに子どもが近寄ってきた場合にそれとなく声掛けもできます。さらにベンチが滑り台やブランコのそばにあれば、盗撮も簡単にできてしまうのです。

この怪しまれずにできそうという状況が「見えにくい」という状態を生むのです。

一方で、Aはベンチの背面に遊具があるため、物色行動や盗撮行動をするときに、後ろ向きにならなければならず、目立ちます。そのため犯行には及びづらいです。

したがって、Bの方が危険ということになります。

ただし、遊具とベンチがかなり離れていれば、そこは「入りにくい場所(子どもに近づきにくい場所)」になるので、その場合はBはそれほど危険ではなくなります。

まとめ 子どもでもできる「場所を見て判断する」防犯

いかがでしたか?一見、大差のない絵を見比べてもらいましたが、塀の高さや落書き・ゴミの有無、ベンチの向きが違うだけで危ない場所になるということがお判りいただけたと思います。があります。ぜひ、お子さまと一緒にこのクイズに挑戦して、お子さま自身に危険から回避することを身に着けてもらえたらと思います。

ちなみに、子どもを狙った犯罪は甘い誘惑や騙しを使って行われることが多いです。

それに知らない人だけでなく、親もよく知る人が、ある日突然犯罪者になったという事件もあるため、「人」だけで危険かどうかを判断することは非常に困難なのです。

しかし、景色は嘘をつきません。そのため「場所」を見て判断するというのは、教える方も、教えられる方も分かりやすいのです。

これからは、「不審者」や「知らない人」に気を付けるという声掛けではなく、入りやすく見えにくい場所に一人で行かないように注意しましょう。そして、万が一、そのような危険な場所で声をかけられたらすぐにその場所を離れるなど、子どもが自分で判断できる防犯対策を教えることで、より効果的な犯罪予防が可能になります。

親子で一緒に危険な場所の見分け方を学びながら、日常生活に取り入れてみましょう。小さな一歩が、子どもたちを守る大きな力になります。

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小宮信夫

大学教授(専攻:犯罪学)

立正大学文学部社会学科教授(社会学博士)。ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科修了。法務省、国連アジア極東犯罪防止研修所などを経て現職。専攻は犯罪学。地域安全マップの考案者であり、現在、全国の自治体や教育委員会などに防犯のアドバイスを行っている。『なぜ「あの場所」は犯罪を引き寄せるのか』(青春出版社)など著書多数。公式サイトは「小宮信夫の犯罪学の部屋」。

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