子どもが嘘をつくのはなぜ?叱る前に知っておきたい心理と正しい関わり方

「なんで嘘つくの?」
思わずそう言ってしまったこと、ありませんか?

宿題をやったと言ったのにやっていなかった。
「やってない」と言えばいいのに、どうしてわざわざ嘘をつくのか。

子どもの嘘に直面すると、「このままで大丈夫?」「性格の問題?」と不安になりますよね。でも実は、子どもの嘘は“悪いこと”というより、心の中で起きていることのサインであることが多いのです。

この記事では、子どもが嘘をついてしまう背景にある気持ちや、ついしてしまいがちな関わり方、そしてこれからできる向き合い方について、分かりやすくお伝えしていきます。

叱る前に少しだけ立ち止まるヒントとして、参考になればうれしいです。

監修者:臨床心理士・公認心理師 新井知佳

子どもが嘘をつくとき、親が感じる不安

子どもの嘘に気づいたとき、多くの保護者が「このまま癖になるのでは」と不安になります。

ランドセルを開けたら、やっていない宿題が出てきた。
「やったよ」と言っていたのに…と、一気に不安や怒りがこみ上げる。思わず、「なんで嘘つくの?」「正直に言いなさい」と強く言ってしまうこともありますよね。

ただこのとき、子どもは「嘘をついたこと」以上に、「怒られるかもしれない」という気持ちでいっぱいになっていることがあります。

親として不安になるのは自然なことです。ただ、その不安のまま関わると、子どもは “本当のことを言うと危険”と感じるようになることがあります。

子どもが嘘をつくのはなぜ?本当の理由

子どもの嘘には必ず理由があります。ここでは、よく見られる心理的な背景を整理します。

怒られるのを避けるための“自己防衛”

実際によくあるのが、「怒られたくない」という気持ちからの嘘です。
宿題をやっていないことよりも、「叱られる怖さ」のほうが強くなると、とっさに「やった」と答えてしまうことがあります。子どもは、その場で正直に話すよりも、「怒られないこと」を優先してしまうのです。

このときの嘘は、悪いことを隠そうとしているというより、自分を守るための反応であることが多いのです。

発達の途中で“現実と想像が混ざる”

特に低学年の子どもでは、嘘というよりも「こうだったらいいな」という気持ちが混ざった話をすることがあります。

「全部できた」「先生にすごく褒められた」そんな言葉の中には、実際の出来事と一緒に、子どもの願いや理想が含まれていることがあります。

この段階では、現実と想像の区別がまだはっきりしていないこともあり、大人の感覚でいう「嘘」とは少し違う性質を持っています。そのため、すぐに「嘘をついた」と決めつけるのではなく、今どんな気持ちだったのかに目を向けることが大切です。

発達の中で見られる自然な行動

子どもが嘘をつく行動は、発達の中で自然に見られるものでもあります。
発達心理学の研究でも、嘘は認知や社会性の発達と深く関係していることが指摘されています。

たとえば、幼児を対象にした研究では、年齢が上がるにつれて、相手の気持ちを考えたり、状況に応じて言葉を選んだりする力とともに、嘘をつく行動も変化していくことが分かっています。つまり、嘘は単なる問題行動ではなく、考える力や人との関わりの中で身につく行動の一つとも言えるのです。

嘘への対応で変わる|関わり方のポイント

嘘にどう対応するかによって、その後の行動は大きく変わります。

「どうして嘘をつくの!」と強く責められる経験が続くと、子どもは「どうやって隠すか」を考えるようになります。嘘をついたことよりも、「バレるかどうか」に意識が向いてしまうのです。

また、「正直に言ったら嫌な反応が返ってきた」という経験が重なると、子どもは次第に“言わない方がいい”と感じるようになります。一方で、関わり方を少し変えるだけで、行動は変わっていきます。

ある日、「宿題やってない」と子どもが自分から言ってきたとします。ここで強く叱ると、「やっぱり言わなければよかった」と感じてしまいます。

反対に、「教えてくれてありがとう」と受け止めたうえで、「じゃあどうする?」と一緒に考えると、子どもは「本当のことを言っても大丈夫だった」と感じることができます。

また、子どもが嘘を言い張る場合も、まずは叱りたい気持ちをいったん抑えることが大切です。そして、「どうして宿題をしたと嘘を言おうと思ったの?」と、怒らずに気持ちを聞いてみてください。叱られると思っていた子どもは拍子抜けして、正直な気持ちを話しやすくなります。

他にも、「正直に言うと怒られると思った?」など、子どもの気持ちを代弁するような声掛けも有効です。
このような場面では、子どもが話したことをすぐに否定しないことがとても大切です。まずは、「そうなんだ」と受け止めてあげましょう。そのうえで、「嘘はよくないこと」「本当のことを言ってほしいこと」を落ち着いて伝えていきます。

子どもにとって大切なのは、正しさよりも、「どう受け止められるか」です。ありのままの気持ちを否定されずに受け止めてもらえたという体験は、「本当のことを言っても大丈夫なんだ」という安心感につながります。 

だからこそ、嘘を責めるのではなく、本当のことを言いやすい状態をつくることが、結果的に嘘を減らすことにつながります。

子どもの嘘を“サイン”として見るという考え方

嘘は問題行動としてだけでなく、「困っているサイン」として捉えることもできます。 

子どもは、うまく言葉にできないとき、嘘という形で自分を守ることがあります。 

「なぜ嘘をついたのか?」ではなく、「何を守ろうとしているのか?」と考えてみる。この視点に変わると、関わり方も変わります。嘘の内容よりも、その背景にある気持ちに目を向けることが大切です。

例えば、答えを写したのに「自分で考えて解けた」と嘘を言う子がいたとします。
表面的には、「宿題を早く終わらせて遊びたかったから」と理由を話すかもしれません。ですが、その心の奥には、「勉強を頑張る良い子だね」と親に褒められたい気持ちが隠れていることがあります。

つまり、”親に褒められる自分”というイメージを守るために、嘘をつくことで”勉強ができない駄目な自分”を隠しているのです。

このように、嘘という目に見える行動の裏には、子どもの不安や自信のなさ、認められたい気持ちなど、目に見えない感情が隠れていることがあります。

だからこそ、子どもの言動を注意深く観察することが大切です。
「どんなときに嘘をつくのか」
「嘘をつく前後で、どんな様子をしているのか」
そうした小さな変化に目を向けることで、子どもの本当の気持ちを理解しやすくなります。

家庭でできる対策|今日からできる関わり方

ここでは、特別な準備がなくても、日常の中でできる関わり方を紹介します。

どれもすぐに取り入れられる、小さな工夫です。

日常の会話で「安心できる空気」をつくる

普段から、失敗しても受け止めてもらえる空気があると、子どもは本当のことを話しやすくなります。

子どもが何か話してきたときに、「それは違うでしょ」とすぐに否定してしまうことはありませんか?悪気はなくても、そのやり取りが続くと、子どもは「また否定されるかもしれない」「言っても分かってもらえないかも」と感じ、少しずつ言葉を選ぶようになります。

だからこそ大切なのは、まず最後まで聞くこと。 内容を正す前に、「そうなんだね」と一度受け止めるだけでも、安心感は変わります。こうした何気ない会話の積み重ねが、「困ったときに話せるかどうか」を大きく左右します。

叱る前に一度立ち止まる習慣をつくる

子どもの言動に対して、思わず感情的に反応してしまいそうになることは誰にでもあります。そんなときは、ほんの数秒でいいので一度立ち止まる。それだけで、伝え方は大きく変わります。

「どうしたの?」「何かあった?」と聞き方を変えるだけでも、子どもの受け取り方は違ってきます。

完璧にコントロールする必要はありません。少し意識するだけでも、“正直に話しても大丈夫”という経験を増やすことにつながります。その積み重ねが、嘘を減らす一番の近道になります。


まとめ

・子どもの嘘は「悪いこと」ではなく、守ろうとする気持ちのサイン
・強く叱るほど「隠す行動」が強まることがある
・正直に話せる関係をつくることで、行動は変わっていく

子どもの嘘に向き合うとき、不安になるのは自然なことです。
でも、その裏にある気持ちに少し目を向けるだけで、関わり方は変わります。

完璧に対応しようとしなくても大丈夫です。まずは「話しても大丈夫」と感じてもらうことから、少しずつ始めてみてください。

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新井知佳

臨床心理士・公認心理師

臨床心理士・公認心理師の資格を持ち、小児科やスクールカウンセラーとして、子どもや保護者の心に寄り添う支援に従事。現在は、小学生の長女と、自閉スペクトラム症・知的発達症をもつ年長の長男の子育てを中心とした生活を送りながら、専門家としては主に認知症の心理評価などを行っている。子育ての実体験と心理の専門知識を生かし、発達や子育てに悩む家族への情報発信や支援活動にも取り組んでいる。

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