
子どもが留守番中に強盗に遭ったら? 予防と対応の方法とは
「ただいま」と帰宅して、親が帰るまでひとりで留守番。小学生になると、こうした時間が増えるご家庭も多いですよね。
しかし最近は、在宅中を狙った強盗事件も増えており、「子どもだけの留守番が不安」という声も少なくありません。
実際に、警察庁の調べによると、減少傾向だった強盗事件は令和4年以降増加傾向にあります。
空き巣と異なり、強盗は“家に人がいる状態”でも侵入してくる可能性があります。 特に注意したいのが、子どもが一人で留守番をしている時間です。
今回は、「侵入を防ぐ備え」・「強盗が発生したときに子どもが取るべき行動」・「親ができる対策」の3つの観点から、実践的な情報をお伝えします。
執筆 元警察官 安井かなえ
目次
子どもの留守番中に強盗を防ぐ防犯対策

子どもが理解できる「鍵ルール」の徹底
強盗の侵入を完全に防ぐことは難しいため、侵入に要する時間を稼ぎ、その間に通報することが大切です。子どもが留守番する前に、「鍵をかける」ことの重要性を繰り返し教えてください。
学校から帰宅したら、すぐに玄関の鍵をかける。窓も施錠する。これを習慣化させることが第一段階です。子どもには「鍵はあなたの命を守る」と、具体的に伝えましょう。
玄関のドア錠だけでなく、補助錠の複数設置も重要です。U字ロックやチェーン錠などの補助錠を追加する ことで、犯人が侵入に要する時間を10分以上に延ばせます。
警察の調査では、侵入に5分以上かかると判断した犯人の約70%が諦めるというデータがあります。
補助錠は子どもでも操作しやすいものを選ぶことが大切です。複雑な操作が必要なものでは、子どもが面倒に感じて使わなくなってしまいます。毎日帰宅後に鍵をかけることを、親が確認する習慣もつけましょう。
窓からの侵入に対する防犯対策
戸建ての場合、1階の窓は侵入経路として狙われやすいため、事前に防犯対策を施すことで、侵入時間を大幅に伸ばせる効果が期待できます。
窓ガラスからの侵入対策として、防犯フィルム(厚さ0.3mm以上)を貼る場合は、1階のすべての窓に貼付することが望ましいです。
防犯フィルムを貼ることで、窓ガラスが割れにくくなり、侵入までの時間を稼ぎやすくなります 。各窓に補助錠を設置し、振動検知型のものを選べば、異常時にアラームが鳴り周囲に危機を知らせます。
さらに、1階の窓に面格子やシャッターを装着することで、物理的な侵入がほぼ不可能になります。特に、リビングや寝室の窓は強化が必須です。費用の都合で全窓対応が難しい場合は、1階を優先的に施工することをおすすめします。
一般的なクレセント錠(半月形の鍵)だけでは不十分な場合もあるため、 ロック機能付きの強化版がおすすめです。
勝手口と通風口の盲点対策
玄関と同等に危険なのが勝手口です。警察の調査では、勝手口からの侵入が全体の15%を占めており、多くの家庭で対策が不十分です。勝手口にも複数の補助錠を設置し、玄関と同じレベルの防御を施してください。
通風口や床下の給気口からも侵入が試みられることがあります。これらの小さな開口部には格子状の防犯カバーを取り付け、防犯ネットを活用し、対策しておくと安心です。 子どもには「これらの場所も定期的に確認する」という意識をさせる ことが大切です。
親子で家全体を一周し、「ここが危ないポイント」と一緒に確認してみましょう。
子どもが強盗に遭遇した際の対応方法とは

強盗の侵入に気づいたとき、どう動く?
もし子どもが強盗の侵入に気づいた 場合、最優先は「身の安全」です。犯人に抵抗することは絶対に避けてください。無理に抵抗すると、かえって危険につながる場合があります 。
子どもに以下の対応を伝えておきましょう 。
・玄関や窓が破壊される音が聞こえたら、すぐに安全な場所に隠れる
・外へ逃げられない場合はトイレ、浴室、鍵のかかる部屋に閉じこもることが効果的
・可能であれば、隣の家や近くの「子ども110番の家」に逃げる
・逃げる出口は玄関だけにこだわらず 、裸足でもまず安全を優先する
・どうしても逃げられない場合は、犯人の指示に従う
強盗犯の目的は金品を奪うことであり、子どもを傷つけることではありません。しかし近年の事件では、抵抗した際に想定外の危害を加えるケースも報告されています。だからこそ、身の安全を最優先に、冷静に対応することが重要です。
子どもが隠れた場所から110番通報ができるよう、携帯電話やスマートフォンを常に携帯するよう指導してください。充電切れがないよう、朝の登校時に親が確認することも大切です。
110番通報シミュレーションは定期的に
強盗に遭遇した場合、警察への通報が被害を最小限に抑えることにつながります。
しかし、子どもが実際にパニック状態で通報できるかは、日頃の練習が大きく影響します。
子どものスマートフォンからワンタッチで通報できるようにあらかじめ設定してください。固定電話からの通報方法も教え、実際に「もしもし、警察ですか?」と話す練習をしましょう。
通報時に伝えるべき情報
110番通報をすると、「事件ですか?事故ですか?」と聞かれるので、「事件です」と伝え、続いて住所と氏名、「家に強盗が入りました」などの状況説明、犯人の人数と特徴(できれば)など、今起きていることをできる限り話してください。
話せない状況でも、まずは110番通報をし、「助けて」だけでも警察は対応してくれます。
月1回程度、親子で「もし強盗が来たら」というロールプレイングを行い、実際に通報の練習をしてください。子どもは緊急時に強い不安を感じやすいため、親からの安心感と反復訓練が必須です。
犯人の特徴を記憶する工夫
子どもが安全な場所に隠れている間、犯人の特徴を記憶することが、警察の捜査に役立ちます。ただし、無理に観察しようとすると、子どもの恐怖心が強くなる場合もあるため、 バランスが重要です。
基本的には、犯人が立ち去った後、または警察到着後に、できるだけ詳しく説明することを重視してください。事前に、子どもに「犯人はどんな顔?どんな声?何を着ていた?」といった質問を親子で練習しておくと、緊急時に冷静に観察できます。
子どもが隠れている場所から、犯人の行動を観察できるなら、スマートフォンのボイスレコーダーや、動画機能で犯人の言葉を録音することも、証拠になります。ただし、録音がバレると犯人が激怒する可能性があるため、安全が確保された場合のみです。
子どもの留守番を安全にするために親ができること

子どもとの日常的なコミュニケーション構築
強盗事件に備えるため、子どもとの日常的なコミュニケーションが大切です。親が「強盗のような悪いことが起こるかもしれない」と過度に不安を与えては逆効果ですが、冷静かつ具体的に事前準備しましょう。
月1回程度、家族で防犯について話す機会をつくり、「もし強盗が来たら」という仮定の話や、ニュースで見た事件を自分ごととして、恐怖ではなく「対策を立てるゲーム」として捉えさせてください。子どもが親に安心できる雰囲気を感じれば、有事の際にも落ち着いて対応できます。
学校から帰宅後、子どもから「帰ってきた!鍵をかけた!」と報告を受ける習慣もつけましょう。親からの「よくやったね」という褒め言葉が、子どもの防犯意識を高めます。
親の仕事が忙しい場合でも、帰宅後に子どもに「家で何があったか、大丈夫だったか」と声かけすることで、子どもは「親が見守ってくれている」と感じられます。
子どもが在宅していることを親が把握する仕組み
子どもが帰宅したら、すぐにLINEやメールで親に連絡する習慣をつけてください。もし連絡がない場合、親は「何か異常が起きているのではないか」と判断し、警察への通報や確認電話をすることができます。
GPS機能付きのキッズ携帯やスマートフォンを持たせ、親が常にリアルタイムで子どもの位置を確認できる体制を整えることがおすすめです。
家族間で位置情報を共有できる見守りサービス 「SASENAI」 でも、家族でお互いを見守れる機能の開発が進められています。
ただし、「監視するため」ではなく、「安全を確認するため」という目的を親子で共有しておく ことが大切です。
近隣との関係づくり
子どもの安全を守るため、近隣の信頼できる大人を事前に探しておきましょう。「子ども110番の家」の位置確認だけでなく、実際にその家を訪問し、子どもと大人が顔見知りになることが理想です。
「もし何か危ないことがあったら、この家に逃げていいからね」と、複数の大人と家を子どもに教え、家以外の安全な場所も事前に確認しましょう。
まとめ
・侵入を遅らせることで通報時間を確保
・緊急時、子どもが冷静に対応できるよう日頃から練習する
・親と地域の連携で見守り体制を構築
子どもの留守番中に強盗が起きるなんて 、できれば考えたくないですよね 。しかし、玄関・窓への多層防御、緊急対応訓練、地域の見守りネットワークを組み合わせることで、被害を大幅に軽減できます。事前準備と正しい対応方法を知ることが、子どもの身の安全を守る最強の防犯対策になるのです。
安井かなえ
元警察官
小学生と幼稚園児までの3人の子どもの肝っ玉母ちゃん。警察庁外国語技能検定北京語上級を持つ。 交番勤務時代に少年の補導や保護者指導を経験後、刑事課の初動捜査班で事件現場に駆けつける刑事を経て、外事課では語学を活かし外国人への取り調べや犯罪捜査などを行う。 現在は、防犯セミナー講師として企業や市民向けに活動中。 好きな音楽はGLAY。