
6月病とは?子どもに見られるサインと家庭でできる心のケア
新生活がスタートして2か月経過した6月は、子育て中の方にとって、ようやくほっと一息つける頃ではないでしょうか。
けれど、お子さんの様子はいかがでしょうか?学校生活にも慣れて、元気に過ごしているように見えても、最近なんとなく体調がすぐれなかったり、情緒が不安定だったり…そんな気がかりな変化はありませんか?
もしかすると、それは「6月病」のサインかもしれません。
今回は「6月病」と呼ばれる心のゆらぎに注目し、その原因や家庭でできるサポートについてご紹介します。
目次
6月病とは?
6月になってからみられる心身の不調は「6月病」といわれています。5月病は新しい環境に慣れないことによって生じる心身の不調を指す言葉ですが、6月病は新生活に馴染もうと努力してきたことによる結果、生じるものといえます。(参考:ともクリニック浜松町【医師監修】6月病とは? 5月病との違いと対策)
新しい環境で過ごす子どもの「こころ」

新しい環境になると、大人と同じように子どもも不安や緊張を感じやすくなります。
さらに、子どもの生きる世界は大人よりも限定的で、日中のほとんどをクラスの中、部活の中など狭いコミュニティの中で過ごしていかなければなりません。子どもにとっての「学校」は、まるで自分の世界そのもの。もちろん、学校だけが唯一の世界という訳ではありませんが学校生活に馴染めないことは、大人以上に大きなストレスになるのです。
親御さんもお子さんが学校でも楽しく過ごしてほしいと「友達と仲良くしてるか」「何かトラブルはないか」と子どもに聞いてしまうこともあると思います。子ども自身も、新しい環境で「新しいクラスと先生にうまく馴染んで、新しい友達を作らなくては。」と強く意気込んで、過剰なほど頑張ってしまうお子さんも多いように思います。行き過ぎてしまうと「みんなから好かれるようにしなくては」「友達の輪に入れるようにしなくては」など自分で自分にプレッシャーをかけ、日々の学校生活が緊張と不安の連続になってしまう子もいます。
そのため、子どもたちは新たな環境がスタートする4月からずっと頑張り続けてきた分、6月になって溜まっていた疲れが心身の不調という形で出てしまう「6月病」は新しい環境に馴染もうと必死に頑張った表れといえるでしょう。また、6月病でみられる心身の不調は、心が疲れきっていることを知らせるSOSサインともいえますので以下のような6月病のサインがみられたならば、子どもたちの体のケアだけではなく心のケアもしてあげることが重要です。
6月病のサイン
・朝、起きられない
・夜、なかなか眠れない
・体が重くて疲れやすい
・食欲がない
・頭痛や腹痛
・気持ちが落ち込みやすい
・集中することが難しくなる
・いらいらしやすい
(参考)
・ともクリニック浜松町【医師監修】6月病とは? 5月病との違いと対策
・こばやし小児科「~6月病~」
いかがでしたでしょうか。次はもしお子さんに6月病のサインがみられた時の心理面でのケアについて詳しく解説していきます。
子どもが6月病になった時の心のケアについて

前章で、6月病は心が疲れきっている表れといいました。体が疲れたときに休養が必要なように、心にも休む時間が必要です。まずは、緊張や不安などで押しつぶされていた心を休ませましょう。
心の休ませ方としては、①頑張ることを一旦やめる、②心穏やかに過ごせるようにする、③甘えさせる、④言葉がけを工夫する、という4つの方法があります。
①頑張ることを一旦やめる
友達付き合いを必死に頑張って疲弊している子どもであれば、「教室にいることが疲れたときは、保健室で休んでみたらどう?」と声をかけてみてもいいかもしれません。「ずっと保健室にいたら教室に戻れなくなるのでは…」と不安になるかもしれませんが、気持ちがいっぱいになっているときには、その言葉が心の救いになることがあります。
担任の先生と連絡をとり、教室でがんばる回数や保健室で休むタイミングなど協議されてもいいのではないでしょうか。
②心穏やかに過ごせるようにする
好きなことをしたり、楽しいと感じられる時間を過ごしたりできると、緊張や不安で張り詰めていた心をリラックスさせることができます。心穏やかに過ごせる時間を確保してあげることが重要です。
もし、好きなことだったのに今はする気力がわかない、昔は楽しかったのに今は楽しむことができないという場合、心が非常に疲れきっている状態といえます。そのようなときに無理をしてしまうと心に余計に負担がかかってしまうので、まずはゆっくり体を休ませることに専念しましょう。必要に応じて、精神科や心療内科を受診して専門家に相談することも考えてみましょう。
③甘えさせる

親に思う存分甘えられることで、心にパワーがたまっていきます。親に甘えることで、愛されていると感じることができ、また等身大の自分を受けとめられていると感じることもできます。自分を肯定する感覚が芽生えたり、心が安定したりします。
普段と違って、子どもがよく甘えてくることはありませんか?それは、心のパワーを充電したいサインかもしれません。そんなときは、その甘えをたくさん受けとめてあげてください。家事などで相手をすることが難しいときは、「この用事が終わったらね」と後でちゃんと向き合うことを伝えましょう。
一方で、自分から甘えてこない子もいるでしょう。そういう時は、こちらからスキンシップの時間をとるようにする、二人きりでお出かけするなど、親に甘えられる時間を作ってみるのもおすすめです。
④言葉がけを工夫する

心のケアをするうえで、どんな言葉をかけるかも非常に重要です。
まずは、気持ちに寄り添った言葉がけをするように心がけましょう。否定したり、叱責したりせず、ありのままを受けとめるようにしましょう。
例えば、学校にいくことが疲れたと言われたら、「そんなこと言わずに頑張りなさい」と返したくなるかもしれませんが、ひとまずグッとこらえて、「そんなに疲れているんだね」と子どもの気持ちに共感する言葉をかけてあげましょう。気持ちを受けとめてもらえたと感じられるだけで、こどもの心はいくらかスッキリするかもしれません。
自分の気持ちをちゃんと受け止めてもらえる安心感があると、「どうしてそんなに疲れているの?」など、少し踏み込んだ質問にも少しずつ答えてくれるかもしれません。
ただ、どんなに寄り添っても、「学校で何があったか言いたくない」「別に何もない」と言い張る子もいるでしょう。この場合、言わないことで、自分自身を保とうとしているのかもしれません。また、親を悲しませたくないという想いで何も言えなくなってしまっているのかもしれません。
そんなときは、何があったか無理やり聞き出そうとするのはやめましょう。「私はあなたの味方だから力になりたい。あなたが辛いことを一人で抱えこんでいるほうが、もっと辛い。話せるようになったら、いつでも話してほしい。」と味方であることを伝えたら、あとは話してくれるのを待ちましょう。待っている間は、気持ちに寄り添った見守り(好きなことを一緒にして、子どもが心穏やかに過ごせるようにするなど)を続けてみましょう。
親だけで抱え込まない

最後になりましたが、6月病になった子どもの心のケアに当たって最も大事なことは“保護者の方がひとりで抱え込まない”ということです。
子どもの辛い状態を目の当たりにして、親は自責して苦しくなりがちです。親自身が精神的に追い詰められてしまうと、子どものサポートができなくなります。親だけで問題を抱えこまず、担任や養護教諭、スクールカウンセラーや病院など、子どもを一緒にサポートしてくれる人や外部機関をみつけることが重要です。
サポートする環境が手厚くなる=支えてくれる人が多くなるということであるため、子どもにとっても親にとっても良いことといえます。
まとめ
・6月病は、子どもが新生活の疲れで心身に不調をきたす状態
・無理をさせず、安心できる環境と声かけが大切
・保護者だけで抱えず、学校や専門機関にも相談を
6月は、新しい環境でがんばってきた子どもたちの心と体に疲れが出やすい時期です。ちょっとした不調も、がんばりすぎた心からのSOSかもしれません。まずは無理をさせず、安心して甘えられる時間や環境を大切にしてあげましょう。「話したくなったら、いつでも聞くよ」と伝えるだけでも、子どもの心は少し軽くなります。保護者だけで抱え込まず、学校や専門機関と連携して支えていきましょう。

新井知佳
臨床心理士・公認心理師
臨床心理士・公認心理師の資格を持ち、小児科やスクールカウンセラーとして、子どもや保護者の心に寄り添う支援に従事。現在は、小学生の長女と、自閉スペクトラム症・知的発達症をもつ年長の長男の子育てを中心とした生活を送りながら、専門家としては主に認知症の心理評価などを行っている。子育ての実体験と心理の専門知識を生かし、発達や子育てに悩む家族への情報発信や支援活動にも取り組んでいる。