【保育士監修】親子で取り組む防犯対策 | 子どもを犯罪から守ろう!
小学校入学を機に、子どもの行動範囲は広がります。「登下校時に子どもが一人になっても大丈夫かな」「不審者対策に何をすればいいのだろう」と、不安がよぎるパパママも多いでしょう。当記事では、親子で取り組む防犯対策について紹介します。子どもと実践できるさまざまな方法を紹介するので、さっそく試してみましょう!
目次
子どもが巻き込まれる犯罪の状況
小学校入学を機に親子で防犯について確認すると、子どもを犯罪被害から守ることにつながります。ここからは、子どもが巻き込まれる犯罪について、警視庁から公表されたデータなどをご紹介します。
道路上における身体犯の認知件数
以下のグラフは、道路上で起きた身体犯の認知件数を示したグラフです。なお、身体犯とは、殺人・傷害・強制わいせつなど、体を侵害する犯罪のことです。
(参考:警察庁「令和元年版 警察白書」https://www.npa.go.jp/hakusyo/r01/honbun/index.html)
道路上における身体犯の認知件数は、全ての年齢層で見ると減少傾向です。一方で、13歳未満の子どもに対する身体犯の認知件数は、5年間でほとんど変わっていないことがわかります。
犯罪が起こりやすい時間帯は登下校時
以下は、子どもが身体犯の被害にあった時間帯を示したグラフです。
(参考:警察庁「令和元年版 警察白書」https://www.npa.go.jp/hakusyo/r01/honbun/index.html)
子どもが被害者となる身体犯の発生時間帯はピークが15~18時、次に多い時間帯が7〜8時であり、犯罪の多くは登下校時に起きています。学校や親の目がない場所でも、防犯意識を高めることが大切です。
子どもが一人のときは特に注意!
登下校や習い事など、子どもが一人になるときは、特に注意が必要です。まずは、子どもが一人になる機会を減らすことを意識しましょう。人気のある道路を選ぶことや、友だちと一緒に出かけるなど、一人になる時間をできるだけ減らします。また、年齢に応じた防犯対策によって、親子で防犯意識を高める取り組みも大切です。
子どもと確認すべき防犯対策
小学校低学年の子どもには「具体的にどうするか」を繰り返し教えると、万が一のときも行動に移しやすくなります。子どもにとって「注意してね」「気を付けてね」という言葉は、何に注意すべきなのか曖昧です。「友だちと一緒に帰って」「知らない人に声をかけられたら逃げて」といった実際の対処法を繰り返し伝えると、危険を察知する力や回避する力が身に付きます。
家族以外にはついて行かない
子どもには、家族以外についていかないことを伝えます。加害者は「知らない人」や「不審者」とは限りません。また、親が知らない人でも、子どもは登下校の途中で挨拶する人や近隣住民を「知っている人」と判断している場合もあります。加害者は近隣住民や顔見知りのケースがあるため、家族以外の人にはついていかないことをルールにします。
知らない場所、危険な場所に行かない
行ったことのない場所や危険な場所には近付かないことを親子の約束にしましょう。子どもだけでは「危険な場所」を判断できない可能性があるため、親がわかりやすく伝える必要があります。例えば、人目につかない道・誰もいない公園・物陰の空き地・公衆トイレ・非常階段などが危険な場所です。近所で思い当たる場所があれば、親の目でチェックし、子どもに「行ってはいけない場所」として教えます。
「いかのおすし」を学ぶ
いか | 「いかない」 | 知らない人について行かない |
の | 「のらない」 | 知らない人の車に乗らない |
お | 「おおごえで叫ぶ」 | 大声で叫び助けを求める |
す | 「すぐ逃げる」 | 怖くなったらすぐ逃げる |
し | 「しらせる」 | 親や周りの大人に知らせる |
「いかのおすし」は、危険を回避する防犯標語で、警視庁などが考案しました。低学年の子どもでも覚えやすい単語で構成されており、保育・教育施設や学校の不審者対策でも用いられます。子どもと一緒に「いかのおすし」を確認し、危険を察知したときの対処法を伝えましょう。
いかのおすしの詳細記事
もしものときは?緊急時に子どもができる4つの対策
もしものときにどう対処すればよいか、普段から子どもと確認しておくと、とっさに体が動きやすくなります。以下は、緊急時に子どもができる対策と、親の伝え方について4つのポイントです。
すぐに逃げる | 怖い思いをしたときは、人のいる場所へ逃げましょう。 |
大声を出す | 「助けて!」と叫びます。「ワー!キャー!」では、子どもの遊びとの判断がつきません。 |
周囲の大人に助けを求める | 緊急時には、通行人の大人に話しかけたりお店に入ったりしていいことを伝えましょう。 |
110番の家の確認 | 110番の家は、子どもが危ない目にあったとき避難できる場所です。110番の家にあるステッカーを教え、通学路などの家や店を確認しておくと安心です。 |
多くの子どもは、現実で危険な場面に直面すると、恐怖や驚きで声が出なくなる「フリーズ」反応が起こる場合があります。フリーズは身動きが取れなくなる状態で、成人でも脅威に直面すると起こり得る反応です。
また、加害者に威圧的な態度を取られたり「静かにしろ」と命令されたりすると、子どもは恐怖で声を出せず、指示に従ってしまう恐れがあります。
子どもにはフリーズ反応が起こる可能性を伝えつつ、少しでも被害の軽減につながるよう、緊急時の対策を繰り返し伝えることが重要です。
伝え方のポイントは、危ない状況を想定して具体的な内容を話すことです。例えば「知らない人に追いかけられたら大通りに逃げよう」「家族以外の人に話しかけられたらすぐに教えて」などと伝えます。
また、1人で歩かなければならない場面においては「下を向かず、周りに注意を払いながら歩こう」と伝えましょう。加害者に対してスキを見せない行動が防犯につながります。
少しでも不安を感じたらすぐに人がいるところへ行き、お父さんやお母さんに電話をするなど、具体的に「どんなとき」に「何をするか」を繰り返し伝えることが重要です。
保護者ができる防犯対策
保護者ができる防犯対策の中には、すぐ準備でき、子どもの安全性が高まるグッズなどもあります。ここからは、保護者ができる防犯対策について、詳しく解説します。
通学路、公園など、子どもが一人になる場所の確認
通学路や公園など、子どもが一人になる場所に危険がないかチェックしましょう。公園のトイレや物陰、人通りの少ない道や暗い道には注意が必要です。子どもが安全なルートを通れるよう、あらかじめ保護者が歩いてみるのもおすすめです。
なお、小学校の登下校班がない地区の場合、近所の子どもと一緒に登校するといった方法を取ります。子ども一人にならない工夫が不審者対策に効果を発揮します。
持ち物や防犯グッズの確認
持ち物における防犯対策の注意点は、名前が書いてあるものを外から見えないようにすることです。不審者は、持ち物から子どもの名前を知り、「○○ちゃん」と声をかける可能性があります。名札は持ち帰らせない小学校がほとんどですが、上靴入れやお道具箱などの持ち物には注意しましょう。名前が書いてあるものは無記名のバッグに入れるといった対策が必要です。
なお、登下校や外出の際に防犯グッズを持たせるのも、防犯対策に有効です。不審者が怖くて声が出せないときも、防犯ブザーならワンタッチで大音量が響きます。防犯グッズは電池切れや充電の残量不足を起こさないよう定期的にチェックし、子どもがいつでも携帯できるようにしましょう。「外に行くときは、ハンカチ・ティッシュ・防犯ブザーだよ」と、合言葉を決めておくと、子どもが忘れにくくなります。
お守りセットの作成
巾着袋やポーチといったランドセルに入るサイズの袋でお守りセットを作ると、子どもの避難先から親へ連絡したいときに便利です。お守りセットには、緊急連絡カード・家族の写真、お金の入ったポーチを入れておきます。緊急連絡カードに記載するのは、保護者の名前・緊急連絡先です。携帯電話を持っている子どもの場合も、小学校には携帯を持って行けないため、ランドセルにお守りセットを入れておくと緊急時に役立ちます。
約束事を作る
親子のライフスタイルに合わせて約束事を作り、子どもと確認しましょう。一人で遊びに行くようになった子どもには「誰と・どこで・何をするのか」家族と共有してから出かける、エレベーターに乗るときは不審者がいないか周囲を確認する、といった約束事です。
約束事を作るときは、子どもの生活パターンに沿って、危険な場所やシーンがないかリストアップします。例えば、習い事の迎えを待つ時間も不審者と遭遇する恐れがあります。「親の車が見えるまでは教室内で待ってね」などと約束事を作ると、子どもも保護者も安心です。
日常的なコミュニケーションも大切
保護者は子どもと日常的にコミュニケーションを取り、子どもの変化に気付けるようにしましょう。低学年の子どもは、初めて不審者に遭遇したとき「何が起こったのかわからない」と困惑している場合があります。親が子どもの普段の様子や行動を知っていれば、表情や態度の変化を見逃しません。また、日頃からコミュニケーションを取っていれば、子どもにとって「親は話を聞いてくれる存在」になり、些細なことでも話しやすくなります。
被害にあったときは110番
被害にあったときは、すぐに110番しましょう。子どもの話を聞くポイントは、否定しないこと・無理に聞き出さないことです。子どものペースで話を聞き、内容をメモするか、可能であればスマホで録音・録画し、警察に届けるときに持っていきます。
なお、被害状況を子どもに尋ねるとき参考にしたいのは、警察庁で発行している「子ども110番の家」のマニュアルです。マニュアルにある聞き取りメモを利用すると、捜査に必要な「何があったか」「いつ」「どこで」などの情報をわかりやすくまとめられます。マニュアルは、警視庁のホームページから確認できます。
(参考:警察庁「『子ども110番の家』地域で守る子どもの安全対応マニュアル」https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki62/pdf/kodomo110-1.pdf)
政府・警察・地域の取り組みも活用しよう
子どもの防犯のため、公的機関の取り組みも活用しましょう。子ども家庭庁では「登下校防犯プラン」を策定し、犯罪が多く起こる登下校時の防犯を推進しています。「登下校防犯ポータルサイト」では、プランの取り組み状況、他の省庁や地方自治体の取り組みを紹介しているため、防犯意識を持つきっかけになります。
また、警察・自治体が発信する防犯メールやアプリも防犯対策の1つです。警察・自治体では、メールなどを用いて犯罪の発生状況や防犯にかかわる情報を発信しています。「〇月×日の〇時頃に不審者が出ました。特徴は~」といった形で、防犯情報が通知される場合もあるため、住まいの地域の防犯メールなどを登録しておきましょう。
まとめ
子どもの犯罪被害は、日頃の声かけや準備、地域との協力で防げる可能性が高まります。まずは子どもが危険な場所に行かないことが大切です。危険な目にあったときも、回避・対処ができるよう、日常生活に防犯対策を取り入れましょう。
なお、保育・教育施設や学校では、不審者訓練を定期的に行っています。訓練の日にはぜひ「訓練でどんなことをしたの?」と、尋ねてみてください。繰り返しイメージすることで防犯意識が高まり、万が一のときの心構えができます
西山繭子
保育士
保育士・介護福祉士・社会福祉士資格を保有。大学で福祉資格を取得後、自治体の福祉窓口における相談業務、老人ホームの介護士などに従事し、支援が必要な人の声に耳を傾ける。妊娠を機に転職を考え、保育士を取得。現在は、反抗期に足を突っ込む息子との距離感に悩みつつ、知識と経験を活かした福祉・保育系記事の監修やライターとして活動中。