
子どもが何も話してくれないのはなぜ?心理と原因を元スクールカウンセラーが解説 【前編】
「今日どうだった?」と聞いても「別に」「普通」としか返ってこない。
そんなやりとりが続くと、「何かあったのかな」「ちゃんと学校で過ごせているのかな」と不安になりますよね。
でも実は、子どもが話さないのには“ちゃんとした理由”があります。そして、その多くは特別な問題ではなく、関わり方や関係性の中で少しずつ変わっていくものです。
この記事では、
・子どもが話さなくなる理由
・「話さない=問題」ではない理由
・子どもが心を閉ざしてしまう背景
を、臨床心理士の視点も交えながら分かりやすく解説します。
「話してくれない」不安を、「今の子どもの気持ちを理解すること」へ変えていきましょう。
監修者:臨床心理士・公認心理師 新井知佳
目次
子どもが話してくれないのは「異常」ではない

まず大前提として知っておきたいのは、「話さない=問題」ではないということです。不安になりやすいポイントだからこそ、最初にここを押さえておくことが大切です。
子どもが話さなくなるのは自然な成長の一部
子どもは成長するにつれて、出来事や感情を「自分の中で考える力」が育っていきます。そのため、小さい頃のように何でもすぐ話すのではなく、あえて話さないという選択をすることも増えていきます。これは「心を整理している状態」であり、決して問題行動ではありません。
学校で友達と少し気まずいことがあったとき、すぐに話せる子もいれば、「なんとなく嫌だったけど、うまく言葉にできない」と感じている子もいます。そんな状態のときに何度も聞かれると、かえって言葉が出にくくなってしまうこともあります。
「なんで話さないの?」と焦るよりも、「今はまだ言葉になっていないのかもしれない」と一歩引いて見守ることで、子どもは安心しやすくなります。
「話さない=問題がある」と決めつけないことが大切
話さない状態が続くと、「何か隠しているのでは」と心配になりますよね。ただ、その沈黙のすべてが問題を意味しているわけではありません。子どもにとっては「話す必要がない」と感じているだけのこともあります。
「今日どうだった?」と聞いても「別に」と返ってくる日が続くと気になりますが、それは特別な出来事がなかった“普通の日”であることも少なくありません。
子どもは、「話したほうがいいかどうか」よりも、「今、話す必要があるかどうか」で判断していることが多いと言われています。無理に理由を探るのではなく、「話したくなったら聞くよ」と余白を持つ関わりを意識してみてください。
子どもが話さなくなる3つの主な理由

話さない背景には、いくつかの共通する理由があります。それを知ることで、「どう関わればいいか」が見えてきます。
「どうせ分かってもらえない」と感じている
子どもは、「この人は分かってくれる」と感じたときに初めて話そうとします。逆に、「どうせ分かってもらえない」と感じると、話すこと自体をやめてしまうことがあります。
日常の中で、ついこんなやり取りをしてしまうことはありませんか?
子どもが出来事を話し始めたときに、「それはこうした方がいいよ」とすぐにアドバイスを返してしまう場面です。親としては良かれと思っていても、子どもにとっては「聞いてもらえなかった」という感覚につながることがあります。
子どもは、「分かってもらえた」と感じたときに、安心して言葉を続けやすくなります。まずは「そうなんだ」「それは大変だったね」と受け止めることを意識してみてください。
話すよりも「自分で処理したい」時期に入っている
成長の過程で、子どもは「自分で考えたい」「自分の中で整理したい」という気持ちが強くなります。これは自立に向かう自然な変化です。
友達との関係で悩んでいるときでも、「親に相談する前に、自分でどうするか考えたい」と思う子もいます。そんなときに無理に聞き出そうとすると、「放っておいてほしい」という気持ちが強くなってしまうことがあります。
こうした時期には、「無理に話さなくてもいいよ。でも困ったらいつでも聞くよ」と伝えておくことが大切です。子どもが自分のペースを保ちながらも、安心して頼れる関係をつくっていきましょう。
自分の心を守るため
①怒られる・否定される経験が積み重なっている
過去の経験から、「話すと嫌な気持ちになる」と感じている場合もあります。これは意識的というよりも、無意識のうちに身につく反応です。
たとえば、何かを話したときに「なんでそんなことしたの?」「それはダメでしょ」と言われることが続くと、「話す=怒られる」というイメージが強くなってしまいます。
その状態になると、子どもは自分を守るために話すことを避けるようになります。
②気持ちと向き合うことが辛いから、あえて話さない
話す=自分の心の中にある気持ちと向き合うということでもあります。
たとえば、こういうことがあって辛かったという話をするとき、子どもはもう一度そのときの辛かったことを思いださないといけません。
出来事が直近で起こったことであったり、辛い気持ちが強かったりするほど、心の中で辛い出来事を追体験することは大変苦しいことになります。だからこそ、あえて話さないことで、自分の心を守るのです。
どんな理由であれ、話さないという行動も立派な意思表明です。「心配しているから聞いているのに、その言い方は何なの!」と怒らずに、ぜひ「今は話したくないんだね」と受容してあげてください。
話さないということを受けとめることで、自分のありのままの気持ちを親は分かってくれたということが子どもに伝わります。親にわかってもらえたという体験の積み重ねによって、親=自分の気持ちを受けとめてくれる存在という、親に対する安心感や信頼感が育っていきます。ありのままの自分を受けとめてもらえる体験を重ねていくことで、子どもは少しずつ話してくれるようになるでしょう。
まとめ
・子どもが話さないのは、成長の中で見られる自然な変化でもある
・「どうせ分かってもらえない」「今はまだ話したくない」という気持ちが隠れていることもある
・無理に聞き出すより、「安心して話せる関係」をつくることが大切
子どもが話してくれないと、不安や焦りを感じることもありますよね。でも、「話さない=問題がある」とは限りません。
子どもは、自分の気持ちを整理していたり、自分なりに心を守ろうとしていたりすることもあります。だからこそ大切なのは、「なんで話してくれないの?」と問い詰めることではなく、「話したくなったら、いつでも聞くよ」という安心感を伝えることです。
小さな安心の積み重ねが、「この人なら話しても大丈夫」という信頼につながっていきます。
後編では、
・逆効果になりやすい親の関わり方
・子どもが安心して話せる関係のつくり方
・今日からできる声かけ
について詳しく解説します。
新井知佳
臨床心理士・公認心理師
臨床心理士・公認心理師の資格を持ち、小児科やスクールカウンセラーとして、子どもや保護者の心に寄り添う支援に従事。現在は、小学生の長女と、自閉スペクトラム症・知的発達症をもつ年長の長男の子育てを中心とした生活を送りながら、専門家としては主に認知症の心理評価などを行っている。子育ての実体験と心理の専門知識を生かし、発達や子育てに悩む家族への情報発信や支援活動にも取り組んでいる。