【保育士監修】「いかのおすし」とは?子どもを守る防犯標語

登下校や学童、習い事など、小学生になると子どもが一人で行動する時間が増えると、保護者としては不安になりますよね。子どもが被害に遭わないためにはどうすればいいのか、悩む保護者も多いのではないでしょうか。

保育園や幼稚園、学校の現場では、子どもが自分の身を自分で守るための防犯標語「いかのおすし」を教えています。この標語は、保護者や教育機関が子どもたちに防犯意識をもたせるために広く活用されている合言葉です。

今回は「いかのおすし」を通して子どもに具体的な防犯対策や教えるべきことを紹介します。

「いかのおすし」は子どもを犯罪から守る合言葉

防犯標語「いかのおすし」は、子どもが自分で自分の身を守れるようにと、子どもたちのために作られた合言葉です。

一見面白い言葉のようにも見えますが、その印象の残りやすさや覚えやすさこそ、子どもに覚えてもらうための工夫でもあります。

「いかのおすし」について、それぞれの言葉の意味を説明します。

「いか」ない/「の」らない

「いか」…親の許可なく誰にもついて行かない

「の」…誰かに誘われても知らない人の車には乗らない

以前は「知らない人」に限定されていましたが、近年は子どもの名前を知っている顔見知りによる犯罪も増えています。

「OOちゃん、こんにちは。ママに頼まれて迎えに来たよ」

「OOくん、駅への行き方がわからなくて、一緒にきて教えてくれる?」

「OOちゃん、お菓子がいっぱいあるから家まで来ない?」

たとえ知り合いや顔見知りでも、上記のように誘われたらキッパリと断り、その場から離れるようにつたえましょう。

また不審者は多くの場合、計画的に子どもを狙います。ターゲットを決めて子どもの行動パターンを観察し、すきを狙って接触することが多いです。子どもを一人で人気のない場所に行かせないことも大切ですが、子どもに「いか」「の」の行動を徹底させることが重要です。

「お」おごえを出す/「す」ぐ逃げる/「し」らせる

「お」…誰かに連れて行かれそうになったら大きな声を出す

「す」…声をかけられたり追いかけられたりしたら、すぐに逃げる

「し」…怖いことにあったり見たりしたら、親や近くの大人に知らせる

「お」「す」「し」は、実際に不審者と遭遇した場合にとる具体的な行動を表しています。

とくに「お」と「す」に関しては日頃から練習をしておかなければ、緊急時にパッと行動にうつすことは難しいです。恐怖を感じると、足がすくんで逃げられないこともあるでしょう。

保護者が一緒にいるときに、公園などで人の目を気にせず大きな声を出す練習をしてみるのも効果的ですよ。

「し」に関しては、子どもが安心して何でも話せる環境を、普段から保護者が積極的に作っておくことが大切です。また、子どもの行動や心の変化に気づき、いつもと違う様子があれば積極的に声をかけてあげましょう。

「いかのおすし」が誕生したきっかけ

防犯標語「いかのおすし」が誕生したのは2004年(平成16年)です。子ども犯罪被害から守るために東京都と警視庁により考案されました。当時の日本では子どもが被害に遭う事件が多発し、社会問題化していました。

【2001年〜2003年】小学生が被害に遭った事件

2001年:小4の女児が失踪(愛知県一宮市)

2001年:小学校で無差別殺人(大阪府池田市)

2002年:小3の女児が行方不明(茨城県取手市)

2003年:小4の女児が誘拐(大阪府熊取町)

これらの事件を受けて、子どもたちが「自分で自分の身を守る」防犯意識を養うことが必要とされました。「いかのおすし」は子どもたちにとって覚えやすく、実際の防犯行動に結びつけやすい合言葉として広く普及しました。

※「いかのおすし」は、犯罪被害を最小限に抑える行動指針ですが、状況によっては子どもがこの通りに行動できるとは限りません。

「危険な場所(空き地、落書きやゴミが落ちているような場所、廃墟など)には近づかない」や「1人で歩くことがあったら周りをよく見るようにすること」など、具体的にどういうところが危険かを伝えることや、一緒に歩いているときに「ここの公園は、誰が遊んでいるか見えづらくて危ない場所だね。」「この通りはガードレールがちゃんとあって、安全だね。」と、危ない場所だけではなく安全な場所も一緒に確認し未然に危険に近づかせない方法を子どもに伝えることも有効です。

保育士兼現役ママがおすすめする効果的な防犯対策

保育士資格と小学生2人をもつ現役ママが、子どもたちに防犯意識をもってもらうために意識していることをおつたえします。

保育士が園で子どもたちにつたえていること

園の子どもたちには以下の2つを通じて防犯意識を養っています。

◎くり返しつたえる

子どもたちの頭に防犯意識を刻み込むためには、何度も繰り返しつたえることが大切です。お散歩前に確認したり、道や公園など現場に近い場所でつたえることで、よりリアリティをもって記憶に残ります。

◎自分の頭で考えさせる

「もしOOだったらどうする?」と具体的なシナリオを設定して、子どもたちと一緒に考える時間をあたえます。自分の頭で一度考えシミュレーションすることで、実際に現場に遭遇したときもすぐに行動にうつしやすくなるからです。

何度も繰り返しつたえて自分の頭で考えてもらうことで、「自分ごと」として防犯意識を身につけられます。

具体的な防犯対策

防犯ブザー

緊急時に大きな音で周囲に知らせることで、自分で大きな声をあげずとも助けを呼べます。

◎選ぶポイント

・バッテリーのもち

・使いやすさ

・持ち運びやすさ

GPSトラッカー

子どもの居場所をスマホで常に把握できるため、迷子や誘拐の防止に役立ちます。子どもの移動エリアを設定し、その範囲から出た際に保護者に知らせる機能もあります。

◎選ぶポイント

・GPSの精度

・バッテリーのもち

・持ち運びやすさ

キッズ携帯

子ども自身でかんたんに操作でき、緊急時でもすぐに保護者と連絡が取れます。GPSも内蔵されているので、子どもの居場所をすぐに把握できます。

◎選ぶポイント

・バッテリーのもち

・使いやすさ

・余分な機能の有無

その他の対策

・子ども110番の家を確認

・地域安全マップの活用

・不審者情報メールの受信設定

・防犯教室への参加

国や地域が行っている子どもを守る制度を活用するのも有効ですよ。

不審者のターゲットにならないためには

不審者は衝動的に子どもに近づきません。計画的に犯行の機会を狙っています。不審者のターゲットとならないように以下の条件に注意しましょう。

◎不審者が狙いやすい子ども

・一人で行動している

・おとなしそう

・人気のない場所にいる

・大人の指示に素直にしたがう

・おもちゃやお菓子に釣られやすい

◎不審者が狙いやすい時間

・学校の登下校(とくに夕方)

・放課後や夜間

・休日や長期休暇中

◎不審者が狙いやすい場所

・人通りの少ない道や路地裏

・公園や広場の死角

・駐車場や駐輪場

・住宅街の路地や空き地

不審者は子どもとの距離が20mの場所で目星をつけると言われています。20mというと学校のプールより少し短い程度ですが、人が並ぶにはかなりの距離があることがわかるでしょう。そして6mまで近づき一気に行動にうつります。

不審者に狙われているかどうかを見極めるのは極めて困難です。まずはターゲットとならないように、上記の条件をもとに日々の行動から見直してみましょう。

実際に被害に遭ったときは

子どもが実際に被害に遭った場合は、速やかに以下の対応を行うことが重要です。

◎警察への通報

すぐに110番通報を行い、警察の指示にしたがいましょう。

・ちょっとしたことだから大丈夫

・あまり大事にしたくない

犯罪の大小は関係ありません。犯行が行われた場合、警察への連絡が最優先です。

◎相談窓口

必要であれば地域の相談窓口も有効です。

・こんなことで相談していいのかな

・なかなか周りには話しづらい

子どもの被害を最小限にするためにも、些細な疑問などもはやめに解決させましょう。

◎SNSによる相談

こども家庭庁では匿名で利用できる「親子のための相談LINE」サービスを行っています。

・子どもが犯罪に遭い、どう接してあげればいいかわからない保護者

・性犯罪に遭ったことを誰にも言えない子ども

一人で悩まないことが何より大切です。しかし、子ども自身が一人でこのサービスにたどり着くのは困難な場合もあります。保護者が事前に伝えておくことも子どもの心を守ることにつながりますよ。

子どもの防犯対策は、保護者や教育者が日常的に意識し、実践することが重要です。防犯標語の「いかのおすし」を活用し、子どもには合言葉として体に染み込ませましょう。「自分の身は自分で守る」という防犯意識を常にもたせておくことが大切ですが一番大切なことは、危険に近づかせないことです。日頃からとっさの行動が取れるように練習するのに加えて危険な場所は近所だとどこにあって、そこには絶対に近づかない約束をしたり、1人で歩くことがあったら周りをしっかりよく見て(ターゲットにされないようにする)約束をするのも有効ですね。

子どもの安全を守るのは大人の役割です。防犯について家族で話し合い、是非行動につなげてみてくださいね。

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中里絵美

保育士

1歳と小学生2人を育てるママライター。保育士資格あり。前職は子ども英会話講師として幼児教育に携わる。仕事と育児の経験から、子どもの教育に関するジャンルが得意。ママ目線を大切に、知りたい情報を伝えながら読みやすく親しみやすい記事を執筆。

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