
これって小1プロブレム?小1プロブレムが起こってしまう理由と、対応法
5月は小学校生活にも少し慣れ始める頃。「最近なんだか甘えん坊」「わがままが増えた気がする…」そんな変化に戸惑っているパパ・ママも多いと思います。中には、小学校初めての授業参観で、教室を歩き回る子どもの姿に驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それ、「小1プロブレム」かもしれません。
今回は、小1プロブレムとは何か、起こる理由と家庭でできる対応法についてわかりやすく解説します。
執筆 元教員 金島ちぐさ
目次
これって小1プロブレム?

小1プロブレムとは、端的に言うと「小学校生活にうまく適応できていない状態」をさします。朝夕の子どもの居場所がなくなる、いわゆる「小1の壁」とは異なりますので、分けて考えてくださいね。
授業中に立ち歩いてしまう
授業中に筆箱の中身を触ったり、髪の毛をいじったりしてしまう子どもは少なくありません。すべての授業で100%集中し続けることは難しいので、多少のことは見守って大丈夫。ただこの延長で、授業中にじっと座っていられずに教室を歩き回ったり、勝手に廊下へ出てしまったりする場合があります。大きな声で授業に関係ない発言をしたり、近くの席の友だちに話しかけたりするのも、周りへの影響が大きいので気にかけたいですね。
集団行動ができない
集会などで列に並んだり、みんなと一緒に待ったりするのが難しい場合があります。じっとしなければと思ってもできなかったり、身体を動かしている方が本人的には落ち着いた気持ちであったりと、子どもによってさまざまな理由があります。
他にも、授業の時間になっても教室に帰ってこなかったり、中には休み時間に学校を抜け出して家へ帰ろうとしたりする子どもも。集団行動に強いストレスを感じている場合に見られます。
登校渋りにつながるケースも
小1プロブレムが原因で学校に苦手意識を持ってしまうと、登校渋りにつながるケースがあります。また、小学校生活でのストレスが心身に表れ、それによって学校へ行きにくくなることもあります。
お腹や頭が痛くなったり、癇癪を起こすようになったり、睡眠がうまく取れなくなったりするようになった場合は、注意が必要です。
小1プロブレムの主な原因は?

「幼稚園や保育園では困らなかったのに」という子どもが多いのが、この小1プロブレムの特徴です。小学校生活も問題なく送れると思っていたところに発生するため保護者も困惑してしまいますが、ではなぜ小1プロブレムが起こるのでしょうか。
授業を受けることにまだ慣れていない
幼稚園や保育園では、45分間椅子にじっと座って先生の話を聞くような活動は多くありません。もちろん工作や食事の時間に椅子に座る機会はあるのですが、小学校での授業とは活動内容が大きく異なります。
45分の授業を1日4~5回受けるということが、慣れていない子どもにとってストレスになってしまいます。このストレスが、座っていられなくて立ち歩いたり、大きな声を出したりする行動につながります。
幼稚園・保育園生活とのギャップ
幼稚園や保育園に行っていれば「集団生活」の経験はありますが、「集団行動」の時間は意外と少ないはずです。それぞれ好きな遊びで自由に過ごす時間が長いので、一日中みんなと同じ行動をとらなければならない小学校生活にギャップがあるでしょう。
今は個性を尊重して多様性を受け入れたり、自主性を大切にしたりする幼稚園・保育園も多いので、そういった自由な教育方針のもとで生活してきた子どもたちにとっては、特に大きなギャップとなります。もちろん小学校以降も多様性や自主性は大切にしているのですが、小学校生活という仕組みそのものに馴染めずに困ってしまう子どもがいるのも事実です。
発達障害などが影響している場合も
比較的自由に過ごせる環境下では気にならなくても、集団行動をしようとしたときに困ったことがきっかけで発達障害の診断を受ける子どももいます。また、文字を書くことや数字の理解など、特定の分野に苦手が生じる学習障害(LD)も、小学校へ入学してから分かるケースが多いでしょう。
小1プロブレムが必ず発達障害や学習障害につながっているわけではありませんが、気になることがある場合は一度先生に相談してみるのも方法です。
小1プロブレムへの対応法

予想していなかった小1プロブレムが起こると、パパ・ママも不安になったり、戸惑ったりしてしまいますよね。まずは子どもに寄り添うことを基本とし、先生にも相談しながら対応しましょう。
子どもの気持ちに寄り添う
まずは下記のような会話で、子どもの気持ちに寄り添ってみてください。
・学校で楽しかったこと
・反対に、嫌だったこと
・困ったことや不安なこと
学校では先生に言葉で訴えることがなかなか難しく、結果として問題行動をとってしまっている可能性があります。困りごとについて家で話すことができるなら、事前に対策しておくことで学校でも落ちついて過ごせるようになるかもしれません。
肯定的な言葉かけをする
子どもはどうしても、注意されたことやできなかったことに意識が向かってしまいます。「今日も怒られた」「今日もできなかった」と自己肯定感が下がってしまうと、登校渋りにつながる原因に。家では、なるべく「できたこと」に着目して、ポジティブな雰囲気作りを心がけましょう。
先生にも相談を
家庭だけで小1プロブレムを解決させるのは難しいので、先生にも相談して少しずつ学校生活に慣れるようにしましょう。「ひとり言は小さな声で」「歩きたくなったら教室の後ろで」など、なるべく子どもに寄り添った方法で、授業への影響を少なくしていく支援が必要です。担任の先生以外にも、保健室の先生やスクールカウンセラーに相談することも可能です。
まとめ
・学校での困りごとを解決する
・肯定的な言葉かけをする
・先生と連携して子どもに合った支援をする
今回は小1プロブレムについてご紹介しました。
小1プロブレムは、決して「悪いこと」ではありません。むしろ「うまくできないことに、ちゃんと向き合っている証拠」。最初から完璧にできる子なんていないので、焦らず少しずつでOKです。
子どもに寄り添い、学校や先生とも連携しながら、家庭でできるサポートを続けていきましょう。

金島ちぐさ
元教員
国立大学の学校教育学部にて、小学校教員と中高音楽教員の免許を取得。卒業後は小学校の正教員として勤務。結婚を機に退職し、現在は小学生2人を育てながら教育・子育てに関する情報を発信している。