
放課後の子どもたちを守るために ~元刑事が伝えたい安全対策〜
子どもの「ただいま!」の声を聞くまで、毎日少しソワソワしてしまう方も多いはず。放課後の時間は、子どもたちにとって楽しい自由時間である一方、私たち保護者にとっては「見守りの目」が届きにくく、不安が大きくなる時間帯でもあります。今回は、元刑事の視点から、放課後の子どもたちを守るために必要な対策をお伝えします。
執筆 元警察官 安井かなえ
目次
放課後は最も危険な時間帯

「令和6年警察白書」によると、13歳未満の子どもが刑法犯の犯罪に巻き込まれた件数は、令和5年度で11,953件でした。
また、千葉県警の報告によると、子どもが被害に遭った時間帯は、登校時間帯である7時台と下校時間帯である14時~17時台に集中しており、登下校時間帯で全体の約72パーセントを占めています。

学校という守られた環境から離れ、家庭という安全な場所にまだ帰っていない「空白の時間」。登下校の時間帯は、子どもたちの行動を見守る大人が最も少なくなります。
また、学校での緊張から解放された子どもたちは警戒心が緩みがちです。友達との楽しい時間に夢中になり、周囲への注意がおろそかになることも多いのです。
下校時の安全対策として、定期的にお子さんと一緒に通学路を歩き、危険箇所を確認することから始めましょう。人通りが少なく、見通しの悪い場所、公衆トイレや駐車場など、死角となる場所、工事現場や空き家周辺、そして「子ども110番の家」や交番、お店など、助けを求められる場所を親子で確認しておくことが大切です。
一人での下校が不安な場合は、同じ方向の友達と帰るようにしましょう。ただし、途中で一人になるタイミングが最も危険であることも、子どもに理解させることが大切です。
また、下校時はまっすぐ家に帰るのが鉄則ですが、どうしても寄り道をする場合は事前に相談するように教えましょう。
放課後の過ごし方別 安全対策

学童保育・放課後クラブ利用時
学童保育や放課後クラブを初めて利用する際には、指導員からお迎えのルールや連絡方法などの利用説明があると思います。
親が施設にお迎えに行く場合は、指導員から子どもの様子を直接聞く機会があるため安心ですが、子どもが自分で帰宅する場合は、その日の過ごし方や様子を把握しにくいことも少なくありません。
そのため、お迎えの時間や方法については、あらかじめ親子で明確なルールを決めておくことが大切です。
例えば、お迎えの時間は厳守すること、やむを得ず代理の人がお迎えに行く場合は必ず事前に施設に連絡し、代理人の身元確認を行うこと、さらに子どもが一人で帰宅する場合は安全確認を徹底することなど、細かい点までしっかり確認しておきましょう。
親子のみならず、職員とも共通認識を持つことで、お子さんの安心だけでなく、ご家族の負担や不安の軽減にもつながります。
習い事や塾への通学
習い事の時間は夕方から夜にかけてが多く、特に冬場は暗くなる時間帯と重なります。できる限り送迎を行い、それが難しい場合は、到着や出発時間の確認方法、緊急時の連絡体制、悪天候時の対応方法など、習い事先との連携を図りましょう。
地域によっては、ファミリー・サポート・センターが習い事の送迎を請け負っているところもあります。様々な制度を活用して、安全に送迎できる制度を確認しておきましょう。
友達の家で遊ぶとき
相手の保護者との連絡先交換、遊ぶ時間と場所の確認、お迎え時間の約束、何かあった時の連絡方法など、事前の確認事項をしっかりと決めておきましょう。
一人で留守番をする子どもへの対策
玄関の鍵は必ずかける、インターホンが鳴っても知らない人には絶対に応答しない、火は絶対に使わない、何かあったらすぐに連絡する、といった基本的な約束事を守らせましょう。
また、保護者の携帯電話、近所の親戚や知人、学校の連絡先、警察・消防の番号など、緊急連絡先を見やすい場所に貼っておき、使い方も事前に練習しておきましょう。
地域での遊び時の安全対策

公園で遊ぶときは、適度な人通りがあり、管理が行き届き、見通しの良い安全な公園を選びましょう。夕方以降は危険が増すため、暗くなる前に帰宅するルールを親子で共有しておくことも大切です。
また、公園での基本ルールとして、
・一人では行かない
・知らない人に話しかけられても応じない
・暗くなる前には必ず帰る
・公衆トイレは一人で行かない
などのルールを親子で話しておくことが大切です。
商業施設で遊ぶ場合も、注意が必要です。
・保護者の許可なく店を移動しない
・知らない人からの声かけに注意する
・ゲームコーナーでの一人行動を避ける
・迷子になった時の対処法を事前に確認する
といった注意点を守らせましょう。
意外と盲点なのが、商業施設のトイレに一人で行くことが危険であるということ。実際に連れ去り事件やわいせつ事件などが多く発生しているので、注意が必要です。可能であれば個室に一人で行かせず、保護者が一緒に行く、もしくは近くで待つなど、安全な行動を徹底しましょう。
また大事なポイントとしては、お子さんには、相手の見た目や面識の有無で危険性を判断するのではなく、子どもをどこか別の場所に移動させる(「こっちに来て」「困っているから手伝って」「〇〇あげるから、来て」など)声掛けがあった場合には絶対に応じないなど、具体的な例を伝えて約束をすることも大事です。
誘拐などの犯罪から守る標語「いかのおすし」

防犯の基本「いかのおすし」(いかない、のらない、おおごえを出す、すぐ逃げる、しらせる)をご存じでしょうか。毎日安全に過ごすための合言葉として警察が啓発活動をしています。シンプルで覚えやすいので、日頃から親子で確認しておきましょう。
また、防犯ブザー、GPS機能付きの見守りサービス、反射材付きのランドセルカバー、緊急時連絡カードなど、効果的な防犯グッズを活用しましょう。ただし、防犯グッズは万能ではありません。使い方を事前に練習し、いざという時に確実に使えるようにしておくことが重要です。
親子のコミュニケーション

子どもの安全を守りたい一方で、過度な制限は子どもの成長を妨げてしまいます。年齢に応じた適切な自由度を与えながら、安全を確保する方法を見つけることが大切です。
日々の会話の中で「今日は誰と一緒にいたの?」「公園で何をしたの?」といった何気ない質問を通じて、子どもの行動を把握しましょう。
また、近所の方々との適度な関係を保ち、お互いの子どもを見守る環境を作ることで、地域全体の防犯力が向上します。また、不審者情報や危険箇所の情報を、学校やPTAを通じて共有し、地域全体で子どもたちの安全を守る体制を作りましょう。
まとめ
・放課後は大人の目が減り、子どもが犯罪被害に遭いやすい
・下校・習い事・留守番など状況別に事前のルール決めが重要
・地域や家庭で見守りを強化し、日頃の何気ない会話で安全意識を高める
子どもの安全は、家庭・学校・地域の連携によって守られます。完璧を目指すよりも、できる対策を一つずつ積み重ねることが大切です。日々の会話やルールづくりを通じて、子どもが安心して放課後を過ごせる環境を一緒に整えていきましょう。
安井かなえ
元警察官
小学生と幼稚園児までの3人の子どもの肝っ玉母ちゃん。警察庁外国語技能検定北京語上級を持つ。 交番勤務時代に少年の補導や保護者指導を経験後、刑事課の初動捜査班で事件現場に駆けつける刑事を経て、外事課では語学を活かし外国人への取り調べや犯罪捜査などを行う。 現在は、防犯セミナー講師として企業や市民向けに活動中。 好きな音楽はGLAY。