【元刑事監修】夏休み中に知る!子どもの危険と防犯対策
夏休みなどの長期休暇は、子どもたちがひとりで過ごす時間が多くなるので、犯罪に巻き込まれやすくなります。
インターネットやSNSも使用時間が普段より長くなるため、安全な使い方について保護者が覚えておきたいポイントをお伝えします。
夏休みが楽しい思い出となるよう、家族みんなが安全対策を意識しましょう。
目次
夏休み中の防犯対策を徹底しよう
梅雨が明けると、いよいよ子どもたちが楽しみにしている夏休みが始まります。
子どもがひとりで過ごす時間が増えると、犯罪のリスクも高まります。
夏休みに起こりうる身の回りの危険を理解し、被害に遭う前に、先回りの防犯対策を考えておきましょう。
子どもには防犯意識を高めさせ、自己防衛の方法を教えることが必要です。
安全な行動のルールや、緊急時の対応方法を家族で一緒に話し合い、楽しい夏休みの思い出を作りましょう。
実際に起きた子どもが狙われやすい状況と対策
夏休みは子どもだけの時間が増えることから、留守番、帰宅時、外出時も子どもが一人でいるケースが多くなります。
留守番、帰宅時、外出時ごとに注意点と対策をご紹介します。
1.留守番するとき
ドアを必ず施錠し、ドアチェーンがある場合は併用します。来訪者がきた場合の対応ルールを事前に家族で話し合うことが大切です。
配達などを装ってドアを開けさせて不審者が侵入するケースも報告されています。
特に夏場は窓を開放したままになっていないか確認し、外から室内が見えないようにカーテンを閉めておきましょう。
2.帰宅するとき
子どもが自宅の鍵を開けた瞬間に声掛けや押し入りがあるという事例が報告されています。
注意すべきポイントは、鍵を開ける前に周りに人がいないかを確認することです。
また、犯罪者はどんな手を使ってでも接触してきます。子どもに対して「助けてほしいことがある」と言ってきても安易に信じないよう伝えましょう。
誰かに声をかけられた場合でも、その人物が本当に安全な人物かどうかは子どもには判断がつきにくいです。
子どもだけで解決せず、近所の人や他の信頼できる大人を呼び、助けを求めることを教えておきましょう。
3.外出するとき
子どもがひとりで外出するとき、普段と違った異常な状況や、明らかな不審者がいたらすぐに警察や近所の人に連絡するように教えましょう。
キッズ携帯などの連絡手段がない場合や、緊急時は近くの商店あるいは「子ども110番の家」などに駆け込んで助けを求めることも大切です。
不審者に追われたときは、子どもの力では到底かなわないため、いざとなったら荷物を捨てて逃げましょう。
一番大切なものは自分の体です。大声を出してとにかく逃げることが大切です。
親子で出かけるときは、なるべく子どもと手を繋ぎ、目を離さないようにするのが理想です。とはいえ、実際は小学生以上になると、恥ずかしがって親と手をつなぐのを拒否するお子さんも増えてきます。
その場合は、常に手が届く範囲に大人が立ち、目を離さないようにします。
とっさの時に肩に手をかけられる位置がよいでしょう。
はぐれた場合に備えて行動予定やルートを事前に確認しておきましょう。
ネットリテラシーの重要性
今や小学生からインターネットを当たり前に利用する時代。情報漏洩などのリスクを回避し、インターネットを適切に利用する能力を「ネットリテラシー」といいます。
ネットリテラシーが低いと、さまざまなトラブルを引き起こす原因にもなります。
中でも、インターネット上で起こる違法薬物の取り引きやパパ活問題は小学生には早いと思われがちですが、実際にはそのリスクにさらされるケースも増えています。
親子で知っておきたい具体的な事例を紹介します。
子どもに起こりうるSNSトラブル
SNSは、知っている人同士や知らない人同士が交流できるサービスで、同じ興味・関心の人でコミュニケーションを図れる便利なツールです。
一方で、子どもがSNSで大人とつながり、児童ポルノなどの性被害や、誘拐などの事件に巻きこまれるケースが後を絶ちません。
警察庁の統計によると、令和5年における小学生のSNSに起因する事犯の被害児童数は139名と、平成26年の38名に比べて3倍以上に増加しています。また、令和5年の不同意性交等(児童が主たる被害者)の件数は700件以上にのぼり、前年(令和4年)の474件から大幅に増加しています。
多くのSNSはアメリカのCOPPA(児童オンラインプライバシー保護法)に基づき13歳未満の利用を禁じています。子どもがSNSを利用する場合、親がしっかりと管理し、未然にトラブルを避けることが重要です。
SNSはすべてが悪いツールではありませんが、メジャーなSNSは年齢制限が設けられていますので、代表的なものを紹介します。
LINE | 利用推奨年齢12歳以上(一部機能は18歳以上のみ) |
Messenger Kids | 6歳以上利用可 |
13歳以上利用可 | |
13歳以上利用可 | |
Youtube | 13歳以上利用可(13歳未満は親または保護者の許可が必要) |
X | 13歳以上利用可 |
Tiktok | 13歳以上利用可 |
Discord | 17歳以上利用可 |
隠語で取り引きされる違法薬物と対策
あらゆる情報があふれるこの時代、違法薬物の情報も容易に子どもの元へ入ってきます。物事の良し悪しの判断力が育っていない小学生のうちから、薬物乱用防止教育をおこない、いかに危険であるかを伝えることが大切です。
たとえば、X(旧ツイッター)で地名を検索すると簡単に違法薬物の販売情報が出てきます。いずれも薬物名は書かず、一見して何のことであるかわからないような投稿がされています。
親自身がこのようなインターネットの隠語を知っておき、子どもがインターネットで検索していないか、不審なメッセージアプリがインストールされていないかを定期的に確認しましょう。
知っておきたい薬物取引の隠語(一部)
手渡し | 手押し |
大麻 | 野菜、極上野菜 |
覚醒剤 | エス、スピード、アイス、シャブ、氷など |
MDMA | エクスタシー、バツ、×、罰、タマ、弾、玉など |
SNSを通じで出会う「パパ活」問題
中高生だけではなく、小学生のSNSの書き込みや家出、無断外出がきっかけとなって出会うパパ活が問題視されています。この背景にはスマートフォンの利用が低年齢化していることが挙げられます。
実際にあった事例では、令和6年6月に小学生の女子児童に現金を渡す約束をして大阪市内のホテルでわいせつな行為をしたとして、50代の会社員が逮捕されています。のちに、この児童は繰り返し「パパ活」をしていたことが判明しました。
親が子どもの財布のお金が急激に増えていないか、また買い与えた覚えのない高価なものを所持していないかを注意深くチェックする必要があります。
子どもの安全のために保護者がスマホのネット利用環境を整えることもできます。
おすすめは「ペアレンタルコントロール」です。親が利用状況を把握したり、安全管理を行える機能で、その中でも「フィルタリング」は、子どもに有害な情報を閲覧させないようにできます。アダルト、出会い、暴力などに関する情報を自動で選別してくれます。
年齢や使用環境に応じて、個別に利用を許可するカスタマイズや、長時間利用を防ぐ時間設定、深夜のみ利用を制限するなど、細やかな設定が可能です。
しかし、この「ペアレンタルコントロール」を厳しくしすぎると、子どもが隠れて制限を解除する、親に嘘をつくといった別の問題が出てくることがあるため、子どもとコミュニケーションをとり話し合うことが大切です。
元刑事がおすすめする防犯グッズの紹介
自宅用防犯グッズ
自宅の防犯グッズとして、まず防犯カメラを思い浮かべる人が多いでしょう。 家の周囲を監視し、不審者の侵入を防ぎます。また、被害に遭った時の状況を確認し、被害の証拠のひとつとしても役立ちます。
ダミーカメラを設置するときは、電気配線がないような不自然な場所に設置しないよう気をつけましょう。犯罪者は防犯カメラが本物かダミーかを注意深く観察するため、常習的な犯罪者には簡単に見分けがつきます。
夜間に有効的なものは、センサーライトです。日中にソーラーパネルで太陽光を集め、そのエネルギーを充電池に蓄積します。 暗くなると人の動きを感知してライトが点灯することで、不審者を追い払います。
自宅の玄関の施錠をスマホで操作できるスマートロックもおすすめです。遠隔で施錠を管理できるほか、開施錠の履歴の確認ができるため安心です。
外出用防犯グッズ
外出時に防犯ブザーを身につける人も多いでしょう。子どもが危険を感じたときに、手動で大音量で周囲に知らせます。
いざとなったとき、驚いてフリーズしてしまうケースもよく聞かれます。防犯ブザーを利用する状況において、実際子ども自身で子どもの身を守るための行動へ移すというのはかなり限界があります。しかし、日頃から防犯ブザーを鳴らす練習をしておくことで、その危険な状況下で子どもが防犯ブザーを鳴らす行動に移せる可能性が高くなりますので、子どもに実際に鳴らす練習をさせてみるのが大切です。
またGPS機能がついているものもおすすめです。子どもの位置をリアルタイムで確認できるほか、トーク機能がついているものがあります。
ランドセルにつけっぱなしにしている場合は、夏休みになったら外して、いつでも身につける習慣をつけましょう。
子どものために親ができること
子どもの安全を守るために、私たち保護者が率先して防犯に関する情報収集することが大切です。
親子で防犯や安全の意識を高めるポイントを3つお伝えします。
親子の緊密なコミュニケーションをはかる | 子どもと一緒に防犯や安全について話し合う時間をつくりましょう。インターネットや外出時の安全について、どうすればよいか子どもの意見も聞いてみます。SNSを使うときに気をつけることや、見知らぬ人に声をかけられたときの対応方法も一緒に話し合いましょう。子どもが、何か困ったりわからないことがあっても、いつでも親に話せる環境づくりが大切です。 |
地域ぐるみで防犯意識を高める | 地域ぐるみで防犯意識を高めるためには、まず住民同士のコミュニケーションが欠かせません。ネットの普及で、最近は近所付き合いが少なくなっていると言われます。近所の人に積極的に挨拶をし、お互いの顔を覚えることが大切です。 地域で防犯について話し合う機会があれば、防犯カメラの設置や街頭の明るさ確保、不審者への警戒など、具体的な対策を地域全体で協力して検討してみましょう。 |
子ども自身の防犯意識を高める | 保護者は、日頃からの子どもが防犯に対する意識を持つような声かけを意識しましょう。 身近に起こりうる危険を具体的に教え、子どもと一緒に対策を考えてみましょう。 各都道府県警察が発信する安全メール(事件発生情報)なども定期的にチェックし、自分の地域にどのような犯罪が起こっているのかを把握しておきます。 自分の身に危険が起きた時のシミュレーションをして、いざというときに備えることが大切です。 |
まとめ
いかがでしたか?
夏休みなどの長期休暇は子どもたちがひとりで過ごす時間が増え、それに伴って事件に巻き込まれるリスクも高まります。
子どもの安全を確保するためには、保護者や地域社会との密な連携が欠かせません。
子ども自身にも防犯意識をしっかりと持たせ、夏休みを安全に過ごしましょう。
安井かなえ
元警察官
小学生と幼稚園児までの3人の子どもの肝っ玉母ちゃん。警察庁外国語技能検定北京語上級を持つ。 交番勤務時代に少年の補導や保護者指導を経験後、刑事課の初動捜査班で事件現場に駆けつける刑事を経て、外事課では語学を活かし外国人への取り調べや犯罪捜査などを行う。 現在は、防犯セミナー講師として企業や市民向けに活動中。 好きな音楽はGLAY。