
「警察に相談」をためらっていませんか?手遅れになる前に
子育て中の不安、いつも誰に相談していますか?
公園で遊ばせていると、見知らぬ人が子どもに話しかけている、SNSで我が子が誹謗中傷されている、近所で不審な物音が続いていて怖い。子育て中は、毎日が小さな不安との戦いですよね。そんな時、あなたは誰に相談しますか? 友達?家族?それとも警察?
「こんな小さなことで警察に相談してもいいのかな」「警察は忙しいだろうし、相手にされないかも」「大げさだと思われたらどうしよう」そう思って、相談をためらっていませんか。実は、警察への相談はもっと気軽に考えて良いのです。
今回は、子育て世代が抱える不安やトラブルへの対処法、そして警察への上手な相談方法についてお伝えします。相談をためらっていた人も、この記事を読めばきっと警察が身近な存在に感じられるはずです。
執筆 元警察官 安井かなえ
目次
いざという時、どっちに連絡?110番 vs #9110

いざという時、110番と#9110、どちらに電話すれば良いか迷う方も多いのではないでしょうか。まずはそれぞれの役割を理解しておきましょう。
110番は緊急通報!今すぐ助けが必要な時
110番通報は、事件・事故に遭遇した時、緊急の助けが必要な時にかけるもの。電話をかけると、警察官が「事件ですか?事故ですか?」とまず聞いてきます。
必要であれば、警察から119番の消防に情報を転送することもあります。
【具体例】
・強盗、ひったくりなどの犯罪に巻き込まれた時
・交通事故を目撃した時、または遭ってしまった時
・DV、児童虐待など、今まさに身の危険を感じている時
110番は、今まさに起きている緊急性が高い状況で、すぐに警察官が駆けつける必要のある時に利用します。
#9110は緊急ではない警察相談専用電話
#9110は、緊急ではないけど、警察に相談したいときにかける番号です。すぐに警察官が駆けつける必要はないが、警察に相談したいことがある時に利用します。この番号にかけると、各都道府県警察本部の相談窓口につながり、専門の相談員が対応してくれます。
【具体例】
・近所で不審者を見かけた
・子どもがいじめに遭っている
・SNSで誹謗中傷されている
・DV、ストーカーの相談をしたい
・落とし物をした、または拾った
・警察への問い合わせ(免許更新など)
間違った番号にかけるとどうなる?
110番は緊急通報のための回線ですが、間違えてかけても責められたり、大きな問題にはなりません。
ただし、たくさんの人が#9110で対応可能な相談を110番にかけてしまうと、回線が混雑し、本当に助けが必要な人に繋がらない可能性があります。
冷静になって適切な番号に電話をかけましょう。緊急か否か迷う場合は、#9110にかけて相談するのがおすすめです。オペレーターが状況を判断し、必要であれば110番への転送や適切な部署への繋ぎ替えを行ってくれます。
警察への相談は「早め」が肝心!
「まだ大丈夫」「もう少し様子を見よう」と、自己判断で相談を先延ばしにしていませんか? 警察への相談は早ければ早いほど良いのです。
早期相談のメリット
①事態の悪化を防げる
ストーカーやDV、迷惑行為などは、早期に相談することで被害の拡大防止につながります。
②証拠の保全につながる
事件・事故の直後は証拠が鮮明に残っているため、早めに相談すると捜査がスムーズに進むことが多いです。
また、インターネットを使った事件では、サーバーに残された情報が数日で消えてしまう場合があるため、注意が必要です。
③警察の対応範囲が広がる
早めに相談することで、警察が取れる対応策の幅が広がります。「見回り」や「警告」などの軽い対応から、「被害届の受理」まで、柔軟な対処が可能です。
放置するとどうなるのか
例えば、子どものSNSトラブル。最初は軽い誹謗中傷だったものが、放置することでエスカレートし、深刻なネットいじめへと発展してしまうケースも少なくありません。
また、近所の不審者を放置しておくと、犯罪に繋がる可能性も否定できません。例えば、似たような手口の犯罪が連続で発生したとき、もしかしたら同一犯人かも?と早期に警戒ができるため、初期通報が防犯のカギになります。
こんなことでも相談していいの?
「こんなことでも相談していいのかな…」と迷う方のために、具体的な相談事例をいくつかご紹介します。
・子どものSNSトラブル
クラスメイトからSNSで悪口を拡散されている→ #9110、またはサイバー犯罪対策課
・近所の不審者
家の周りをうろつく不審な人や、危険な運転をする車を見かけたときは #9110、緊急性があれば110番。パトロールをして欲しい場合は管轄の警察署でも可能です。
・DV
パートナーから暴力を受けている→ #9110、緊急性があれば110番。または生活安全課。
・子どもの万引き
子どもが万引きをしてしまった→ #9110、または少年課
・落とし物
財布を落としてしまった→ #9110、または最寄りの交番。都道府県によっては、インターネット上で落とし物検索も可能。
相談するときのポイントは?
#9110は匿名での相談も可能です。緊急性がない場合は、相談内容をあらかじめメモにまとめておくとスムーズです。特に「いつ・どこで・何が起きたか」など日時や場所を具体的に整理しておきましょう。
直接相談したい時は警察署に直接訪問して相談することもできます。証拠となる写真や動画、資料などがあれば持参しましょう。
また、女の子のデリケートな悩みなどでは、女性の警察官に対応してもらいたいと申し出ることもできます。私が警察署に勤務していた時は、相談専門の部署がありました。部署の名前は都道府県によって異なりますが、相談に乗ってくれる担当者がいます。一部の警察署では、メールでの相談も受け付けています。お住まいの地域の警察署のウェブサイトを確認してみてください。
警察官は相談のプロです。「これくらいで…」と思うようなことでも大丈夫。どんな些細なことでも親身になって対応してくれます。相談することで、解決の糸口が見つかるかもしれません。
まとめ
・ためらわずに相談を!
・緊急時:110番
・緊急ではない相談:#9110
子育て中は、毎日が予測不可能な出来事の連続です。子どもの安全を守るためには、親が防犯意識を高めることが大切です。「何かおかしい」と感じたら、ためらわずに警察に相談しましょう。
勇気を出して相談したことで、危険を未然に防ぎ、安心を取り戻せたというケースもたくさんあります。警察は市民の味方です。一人で抱え込まず、まずは相談してみませんか?
安井かなえ
元警察官
小学生と幼稚園児までの3人の子どもの肝っ玉母ちゃん。警察庁外国語技能検定北京語上級を持つ。 交番勤務時代に少年の補導や保護者指導を経験後、刑事課の初動捜査班で事件現場に駆けつける刑事を経て、外事課では語学を活かし外国人への取り調べや犯罪捜査などを行う。 現在は、防犯セミナー講師として企業や市民向けに活動中。 好きな音楽はGLAY。